NHK「ガッテン!」 痛みについての回

 木津川市城山台、西歯科クリニックの院長 西です。

 10月2日(水)NHKで放送された「ガッテン!」(旧番組名:ためしてガッテン) は痛みについて、痛みのメカニズムや慢性疼痛についての回でした。

 当院で、私が常々お話ししていることを、わかりやすく説明してくれておりました。痛みのメカニズムは非常に複雑で、またわかってないことも多くありますが、脳科学の進歩により近年急速に研究が進んでいる分野でもあります。

10年くらい前からずっと言い続けていたのですが、なかなかこのようなことを取り上げてくれるメディアもなく、信じてもらえなかったり、歪めて受け取られたりと、できるかぎり保存的に痛みを軽減させたい想いにもかかわらずうまくわかってもらない悩みを抱えておりましたが、納豆が良いと放送があった翌日には納豆が店頭から消えたというくらい影響力のあるテレビ番組でようやく取り上げてくれたなあという思いです。

痛みは「脳」で認知します。 末梢の痛点への刺激が信号として神経を伝わり脳の感覚を司る領域へ到達して始めて痛みを認知するのですが、その経路上に感情を司る脳の前頭前野を通過するルートがあります。

ですので、痛みはその時の感情に大きく左右されます。 番組でもあったように、「痛い映像」を見てから見る前と同じ刺激をしたら、見た後の方が痛みを強く感じるのです。 ストレスは大きな増悪要因となります。 感情の状態によっては、逆に痛みを弱く感じることも起こります。

 スポーツなどでケガをしているのに痛みを感じず、他人から指摘されたら急に痛みを感じてきたなどの経験はないでしょうか?

 

 また、痛みをずっと気にかけていると、痛みの記憶が残り慢性疼痛の原因になったりもします。 痛みを気にするあまり、ますます痛みが引かない、強くなるという悪循環に入るのです。 痛みと対峙し続けていると、精神的に強く疲労していまい、さらにひどくなってしまうことがあるのです。 番組中でどんな歯科治療をしても歯が痛くて動くのもままならなくなったという方の再現ドラマがありましたが、この方が痛みから抜け出せたのは薬などではありません。医師のアドバイスから痛みとの対峙を避けるようにしたからでした。

 脳というのは、凄い機能を持っていますが、このようなやっかいな面もあります。

当院では、このような痛みの可能性がある場合、はっきりと侵襲を伴う治療が必要であると診断できるまでは、原則として侵襲的な治療(歯を削る、抜歯をするなど)は行いません。 痛みをすぐ改善して欲しいというお気持ちはよくわかりますが、侵襲的な治療は元に戻すことができません。 神経を取ったり歯を抜けば痛みが治るかもしれませんが、それをしなくても寛解(低下させる、症状を抑える)させることができるかもしれません。それをしても治らないこともあります。 はっきり診断がつくまでは、確かめながら様子をみて診断を絞り込むという行程が必要です。 削ったり抜いたりなどの必要のない、元に戻せない治療はしたくないという想いからのことですので、ご理解いただけますと幸いです。